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耐火 ・ 準耐火構造

「 目 次 」

■  004  必見).第27条の改正
             小規模な建築物の主要構造部規制の合理化耐火要件の緩和 (「国土交通省.htm」より抜粋)

■  001 
耐火構造 (法2条7号,令107条)
      
耐火構造の耐火時間  
      
改正 耐火性能に関する技術的基準(建築基準法施行令第107条)の合理化」 (令和5年4月1日より施行
      
耐火構造における階の算定

■  002 準耐火構造 (法2条7号の2,令107条の2,令115条の2の2)
      準耐火構造の耐火時間(分)

■  003 耐火構造の注意事項
      
耐火構造の注意事項
       屋根に設けるトップライトの構造
       鉄骨造のブレースの耐火被覆について
       外壁耐火ALC板の支持材及び取付け金具の耐火被覆について
       耐火建築物の屋根スラブ上に設ける修景(見栄え上の)目的の置き屋根(勾配屋根)について
       耐火建築物の屋上部分に,本体の柱を延ばして広告板等を支持した場合の柱の被覆について
       耐火建築物等の屋上部分の屋上緑化について
       メゾネット型共同住宅に設ける住戸内の専用階段は木造で造れるか
       準耐火・耐失構造の外壁に可燃材料である木材や外断熱を張ることは可能か (「防火・準防火構造」の項も参照
       免震構造の耐火性能の注意点について
      
準耐火構造の注意事項




■  004 ※※ 必見).第27条の改正
小規模な建築物の主要構造部規制の合理化
耐火要件の緩和 (「国土交通省.htm」より抜粋)
2019年の建築基準法第27条の改正によって,緩和条件を満たせば200u未満の木造3階建て共同住宅(木三共)を建築する場合には耐火要件を満たす必要なく建築することが可能となりました。1時間準耐火構造でよいことになりました。 ただし,耐火要件を緩和させるためには自動火災報知器の設置や,階段の安全装置の設置が必要です。
(詳細 → 「
防火区画 ・ 防火上主要な間仕切り(別のウィンドウで表示) → 「 必見).第27条の改正」を参照してください。)



■  001 耐火構造 (法2条7号,令107条) 2007W/2006H)

耐火構造用語の定義が変わりました。施行令の技術的基準が一部仕様規定になりました。
従来は主要構造部について,政令で定める耐火性能を有することでしたが,今回の性能規定化に伴い,「壁,柱,床その他の建築物の部分の構造のうち,耐火性能に関して〜(中略)〜
建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもの」と全面的に改正されました。


耐火構造は,耐火建築物の主要構造部等として用いられ,壁,柱,床等の主要構造部の部位について,
建物階数に応じて倒壊及び延焼を防此するため政令で定める耐火性能(下表)を有する鉄筋コンクリート造,れんが造等で,「大臣が定めた構造方法を用いるもの」(図)または「大臣の認定を受けたもの」をいう。耐火構造の建物は火災後に燃焼が終了するまで放置しても倒れないということ。3時間から30分の耐火時間が定められている。

耐火構造の耐火時間(時間)  (耐火建築物の防火区画
の耐火時間も同様)    建築物の部分の耐火時間及び最上階からの階数が改正されています。(令和5年4月1日より施行

耐火構造の耐火時間(時間)
           
             部分






要件

最上階
から
の階数

はり 屋根 階段
間仕切壁 外壁
耐力壁 非耐力壁 耐力壁 非耐力壁
延焼の
おそれ
あり なし
非損傷性(1号)
(通常の火災)
1〜4 0.5 0.5
5〜14
5〜
遮熱性(2号)
(通常の火災)
0.5
遮炎性(3号)
(屋内の通常の火災)
0.5 0.5

耐火性能に関しての改正された政令が,耐火性能に関する技術的基準を,通常の火災による火熱が一定時間加えられた場合に,次に掲げる要件を満たすものであるものとします。 (第107条関係)

1. 構造耐力上支障のある変形などの損傷を生じないものであること(火事で壊れないこと)。 (非損傷性
2. 当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること(火事で反対側が燃えないこと) 。(遮熱性
3. 屋外に火炎を出す原因となるとなるき裂その他の損傷を生じないものであること(火事で炎が抜けないこと) 。(遮炎性

上記の
1,2に関しては通常の火災を想定しており,3に関しては屋内側からの火災を想定しています。
1.非損傷性に関しての加熱時間は,従来の規定を踏襲し,壁,柱,はり,床について階数に応じて1時間から3時間の火災に耐えることとし,屋根については30分としています。階段については時間の指定は無かったですが,耐火時間を測定する方法が確立してきたため30分として新たに定めました。
2.遮熱性に関しては,通常の火災が約1時間程度なので,階数による差を設けず1時間(非耐力壁で延焼のおそれのある部分以外の部分は30分)としました。
3.遮炎性に関しては,外壁および屋根の裏面の温度の上昇によって火災が屋外側に達しない基準として,階数による差を設けず30分から1時間としています。(告示1399号含)

通常の火災については「屋根の構造」を参照。




改正 耐火性能に関する技術的基準(建築基準法施行令第107条)の合理化

1.5時間2.5時間耐火構造の新設

建築基準法施行令の一部を改正する政令(令和5年政令第34号)が
令和5年4月1日より施行され,耐火性能に関する技術的基準(建築基準法施行令第107条)の合理化がなされました。概要を以下に示します。

木造による耐火設計ニーズの高い中高層建築物に適用される耐火性能基準(火災時の倒壊防止のために壁,柱等が耐えるべき時間)を合理化することで木材利用の促進を図る目的から,階数に応じて要求される耐火性能基準が60分刻みから30分刻みへ精緻化されました。
最上階から数えた階数が5以上9以下の階では1.5時間の耐火性能で設計することが可能となります。建築物の部分は間仕切壁および外壁耐力壁に限る),並びにです。
最上階から数えた階数が15以上19以下の階では2.5時間の耐火性能で設計することが可能となります。建築物の部分はおよびです。

また,これに伴って耐火構造の構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1399号)についての例示仕様が追加される予定です。

改正 耐火構造の耐火時間 (時間)

 最上階からの階数 はり 屋根 階段
間仕切壁 外壁
耐力壁 耐力壁
最上階及び2以上4以内 0.5 0.5
5以上9以内 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5
10以上14以内
15以上19以内 2.5 2.5
20以上




耐火構造における階の算定 (1995K )

建築物の吹抜き部分は,吹抜き部分と床を共有する階のうち,最上階から数えた階数が最も多い階数(6)となる。
令2条1項八号の規定による
階数に算入されない塔屋等については,耐火時間は最上階(1)と同様の取扱いとなる。
また,外見上は一体的な建築物であっても,エキスパンション・ジョイント等により,構造的に分離された低層建築物の部分は,独立した別棟として,その部分の最上階(1〜)から数えてよい。
地階がある場合の地階部分の階数は,令2条1項八号の規定にかかわらず全て算入する。





下図のように,エキスパンション・ジョイントなしで一体の建築物の場合は,低層部分の最上階からの1,2階は高層部分と同様に5,6階と算定する。
高層部分の過重を負担しない「
」部分については,それぞれ単独で(最上階(1)→2)考えてよいことになっている。





建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第七号の規定に基づく,耐火構造の構造方法
H12告示1399号第1〜第6 (省略)



■  002 準耐火構造 (法2条7号の2,令107条の2,令115条の2の2) (2007W)

準耐火構造用語の定義が変わりました。施行令の技術的基準が一部仕様規定になりました。
従来は準耐火構造は,耐火構造以外の構造であって,耐火構造に準ずる政令で定める耐火性能を有すること でしたが,今回の性能規定化に伴い,「壁,柱,床その他の建築物の部分の構造のうち,準耐火性能に関して 〜(中略)〜
建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもの」と全面的に改正されました。


準耐火構造は,準耐火建築物の主要構造部等として用いられ,壁,柱,床等の主要構造部の部位について,延焼を抑制するために
政令で定める準耐火性能(下表)を有するもので,「大臣が定めた構造方法を用いるもの」(H12告示1358号)または「大臣の認定を受けたもの」をいう。耐火構造のように火災の鎮火後までの安全性担保は求められていない。30分または45分の耐火時間が定められている。
なお,
3階建て共同住宅(法27条1項ただし書き,令115条の2の2)については壁,柱,床,はり及び屋根の軒裏の延焼のおそれのある部分の部位を通常の45分準耐火性能ではなく,1時間を設定している。

準耐火構造の耐火時間(分)

準耐火構造の耐火時間(分)
           
            部分






要件

はり 屋根 階段
耐力壁 非耐力壁
間仕
切壁
外壁 間仕
切壁
外壁 軒裏
延焼の
おそれ
延焼の
おそれ
あり なし あり なし
45



非損傷性
(通常の火災)
45 45 45 45 45 30 30
遮熱性
(通常の火災)
45 45 45 45 30 45 45 30
遮炎性
(屋内の通常の火災)
45 45 30 30





非損傷性
(通常の火災)
60 60 60 60 60 30 30
遮熱性
(通常の火災)
60 60 60 60 30 60 60 30
遮炎性
(屋内の通常の火災)
60 60 30 30

準耐火性能に関しての改正された政令が,準耐火性能に関する技術的基準を,通常の火災による火熱が一定時間加えられた場合に,次に掲げる要件を満たすものであるものとします。 (第107条の2関係)

1. 構造耐力上支障のある変形などの損傷を生じないものであること(火事で壊れないこと)。 (非損傷性
2. 当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること(火事で反対側が燃えないこと) 。(遮熱性
3. 屋外に火炎を出す原因となるとなるき裂その他の損傷を生じないものであること(火事で炎が抜けないこと) 。(遮炎性

上記の
1,2に関しては通常の火災を想定しており,3に関しては屋内側からの火災を想定しています。
1.非損傷性に関しての加熱時間は,従来の規定を踏襲し,壁,柱,はり,床について30分から45分間の火災に耐えることとし,屋根については定めていません。階段については時間の指定は無かったですが,耐火時間を測定する方法が確立してきたため30分として新たに定めました。
2.遮熱性に関しては,通常の火災が約1時間程度なので,45分程度耐えれれば消防活動において延焼を防止できるという考え方です。(非耐力壁で延焼のおそれのある部分以外の部分は30分)
3.遮炎性に関しては,外壁および屋根(軒裏含む)の裏面の温度の上昇によって火災が屋外側に達しない基準として,階数による差を設けず30分から45分間としています。(告示1.358号含)

通常の火災については「屋根の構造」を参照。

ここで
注意すべき点は,旧法では「準耐火構造」は「耐火構造以外の構造」と位置付けていましたが,今回の性能規定化に伴い,上位の性能を有する材料等については,下位の材料に含まれるものとされましたので,「準耐火構造」には「耐火構造」が含まれることとなりました。



建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第七号の二の規定に基づく,準耐火構造の構造方法
H12告示1358号第1〜第6 (省略)

参考).
耐準耐火構造の火被覆の例
t = 15mm 石膏ボード(45分)
t = 16mm 強化石膏ボード(1時間)



■  003 耐火構造の注意事項 (2006H)

耐火構造の注意事項


屋根に設けるトップライトの構造
耐火建築物の屋根は
30分耐火の要求があり,トップライトとしてアクリルドームを使用する場合は,網入りガラスを併設する等の対応が必要である。

鉄骨造のブレースの耐火被覆について
鉄骨ブレース構造を耐火建築物とする場合,ブレース等の筋かいは主要構造部に該当しないので原則として耐火被覆をする必要はない。ただし,水平力だけでなく
鉛直力も負担するものは主要構造部とみなし,耐火被覆が必要である。

外壁耐火ALC板の支持材及び取付け金具の耐火被覆について
個別に大臣認定を受けた耐火パネル(ALC板等)はそれぞれの仕様書に従うことになるが,それ以外(大臣認定以外)の一般のものは,
下地材のうち「方立,無目等の金属性の枠組」及び「耐火パネルを支持するための金属性取付け金具」だけでなく,それを支持する間柱,胴縁等の下地材についても耐火被覆をするなど耐火性能を有する必要がある

耐火建築物の屋根スラブ上に設ける修景(見栄え上の)目的の置き屋根(勾配屋根)について
修景等を目的とし,屋根内部も使用しない不燃材料で造られた置き屋根(勾配屋根)については,外部からの延焼や内部火災による影響はないため,置き屋根と
耐火構造の屋根スラブを一体と考え,置き屋根部分の耐火被覆の必要性はない。

耐火建築物の屋上部分に,本体の柱を延ばして広告板等を支持した場合の柱の被覆について
一般的には,当該柱が建築物本体の主架構(構造上重要なもの)でなければ,主要構造部に該当しないものとして耐火被覆は不要とされている。なお,広告板等の設置に当たっては高さ算定や日影規制の問題もあるので,事前に行政庁と要相談。

耐火建築物等の屋上部分の屋上緑化について
屋根に一定の
耐火性能等が求められている場合は注意が必要。
一般的には,植物や土などは,建築物として扱っていないのが現状であるが,植物などの性質によっては防火上支障をきたすこともある。
飛び火防止や耐火性能を損なわないよう配慮が必要。

メゾネット型共同住宅に設ける住戸内の専用階段は木造で造れるか
主要構造部に該当するものとして鉄骨造等の
耐火構造としなければならない。もっとも現在では,木質系材料を用いた認定耐火構造もある。

準耐火・耐失構造の外壁に可燃材料である木材や外断熱を張ることは可能か (「防火・準防火構造」の項も参照
告示に例示されている準耐火・耐火構造の外壁や軒裏に
木材や,不燃系の外断熱(グラスウール,ロックウールなど)を張ることは可能である。あくまでこの扱いは普遍的に用いられる構造方法として告示で定められた仕様規定のものに限られ,大臣認定の材料については,こういった外装材を含めて認定を受ける必要がある。
なお,鉄筋コンクリート造,鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄骨コンクリート造の外壁に施す外断熱については以下に掲げる有機系断熱材が認められている。吹付けウレタンフォームは現場発泡のため施工上のばらつきもあり,慎重に対応する必要がある。

有機系断熱材の例

発泡プラスチック系JIS製品の例 (JIS A 9511)
ビーズ法ポリスチレンフォーム 
押出法ポリスチレンフォーム
硬質ウレタンフォーム
フェノールフォーム

免震構造の耐火性能の注意点について
地震力に対する建物の構造設計において,従来の「耐震」設計法に加えて,地震力を抑制または制御し,そのエネルギーが建物に伝わらないようにする「免震」あるいは「制振」という考え方が近年導入されるようになってきた。免震構造は,
基礎免震中間階免震とに大別され,耐火性能上の注意点は以下のとおりである。

基礎免震
H12告示2009号若しくは国土交通大臣の認定により計画される。基礎は令1条1項3号の主要構造部ではないため耐火被覆等の法的義務はないが,構造耐力上主要な部分には該当するので火災時に構造耐力を低下させない措置が望ましい。

中間階免震
耐火建築物の柱等に免震装置を設ける場合には,耐火性能を確保するための措置として耐火被覆(耐火帯)を設けることが多い。その際,原則として国土交通大臣の認定が必要となる。なお,途中階に免震装置を挿入し,階と階を絶縁する工法では,竪穴区画等の防火区画部分との取り合いには特に配慮が必要である。

注).なお,平成12年12月25日に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行されたことにより,建築物の耐震改修の計画の認定を受けたものは,建築基準法等の規定(法27条第1項,61条,62条1項)に適合しなくてもやむを得ないとされている。



準耐火構造の注意事項

主要構造部である間仕切壁に両側それぞれ異なった仕様材料を用いることは可能か

主要構造部である間仕切壁を告示(H12告示1358号)に示された準耐火構造とする場合,告示では「両側にそれぞれ次のいずれかの防火被覆...」とあるので,
両側とも同一仕様としなければならない。片面を厚さ15mmのせっこうボードとすれば,反対側も厚さ15mmのせっこうボードとする必要がある。










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