「建築基準法及び関連法解説」
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用途変更
「 目 次
」
■ 001 用途変更その1
法第87条全文 (法6章
雑則)
法第87条の内容及び解説 (2009JCBAより)
■ 002 用途変更その2
1.確認申請が必要な用途変更
1).建築行為を伴わない,法6条1項1号の特殊建築物への用途変更
2).類似用途相互間の場合の緩和
3).留意点
2.現行法令に適合している建築物における準用規定
(「建築行為」を伴わない用途変更の規制(法87条2項))
3.既存不適格建築物における準用規定
1).法の準用範囲
2).法の適用の緩和
@.類似の用途変更の緩和 1
(「用途地域制限」以外の場合)
A.類似の用途変更の緩和 2
(「用途地域制限」の場合)
B.用途変更部分のみに準用される規定(同法4項)
参考).「コンバージョン」について
■ 001 用途変更その1
法第87条全文 (法6章
雑則)
【用途の変更に対するこの法律の準用】
第87条 建築物の用途を変更して第6条第1項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては,同条(第3項及び第5項から第12項までを除く。),第6条の2(第3項から第8項までを除く。),第6条の3(第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。),第7条第1項並びに第18条第1項から第3項まで及び第12項から第14項までの規定を準用する。この場合において,第7条第1項中「建築主事の検査を申請しなければならない」とあるのは,「建築主事に届け出なければならない」と読み替えるものとする。
政令 ⇒ 令第137条の17
「建築物の用途を変更して特殊建築物とする場合に建築主
... 」
関連 ⇒ 規第4条の2
「用途変更に関する工事完了届の様式等」
2
建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては,第48条第1項から第13項まで,第51条,第60条の2第3項及び第68条の3第7項の規定並びに第39条第2項,第40条,第43条第2項,第43条の2,第49条から第50条まで,第68条の2第1項及び第5項並びに第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定を準用する。
3 第3条第2項の規定により第24条,第27条,第28条第1項若しくは第3項,第29条,第30条,第35条から第35条の3まで,第36条中第28条第1項若しくは第35条に関する部分,第48条第1項から第13項まで若しくは第51条の規定又は第39条第2項,第40条,第43条第2項,第43条の2,第49条から第50条まで,第68条の2第1項若しくは第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては,次の各号のいずれかに該当する場合を除き,これらの規定を準用する。
一 増築,改築,大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合
二
当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであって,かつ,建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合
政令 ⇒ 令第137条の18第1項
「建築物の用途を変更する場合に法第24条等の規定を準用
... 」
三 第48条第1項から第13項までの規定に関しては,用途の変更が政令で定める範囲内である場合
政令 ⇒ 令第137条の18第2項
「建築物の用途を変更する場合に法第24条等の規定を準用
... 」
4 第86条の7第2項(第35条に係る部分に限る。)及び第86条の7第3項(第28条第1項若しくは第3項,第29条,第30条,第35条の3又は第36条(居室の採光面積に係る部分に限る。以下この項において同じ。)に係る部分に限る。)の規定は,第3条第2項の規定により第28条第1項若しくは第3項,第29条,第30条,第35条,第35条の3又は第36条の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合について準用する。この場合において,第86条の7第2項及び第3項中「増築等」とあるのは「用途の変更」と,「第3条第3項第三号及び第四号」とあるのは「第87条第3項」と読み替えるものとする。
法第87条の内容及び解説 (2009JCBAより)
【内容】
第1項
・ 第1項は用途変更時の確認手続きについて規定しているものであるが,本項において想定している「用途変更」とは,ある建築物を他の用途に転用して,法別表第1に掲げる用途の特殊建築物(100u超)とする行為のことである。この場合,法第6条第1項(確認の申請書)に規定するような建築行為が行われなくても,建築確認や完了届が必要となる。
第2項
・ 第2項は,用途変更時における法第48条や法第51条のように建築行為を規制している規定の取扱いについて定めたものである。本項は,たとえ「建築」に該当する行為がない場合であっても,用途規制の趣旨に合致しないような状態を現出するような用途変更に係る行為を禁止するものである。具体的には,以下のケースが想定される。
● 増改築などの建築行為を行わずに原動機の出力,機械の台数,容器などの容量を変更したり,工場等の作業場などの床面積を法第48条の規定に抵触するような形で増加させたりする行為
● いわゆる産業廃棄物処理施設である廃プラスチック類の破砕施設に,法第51条の規定に抵触するような形で木くず,がれき類などの品目を追加するような行為
第3項
・ 第3項は,用途変更に際しても,既存不適格の規定が継続される場合について規定しているものである。
・ 防火(法第24条,第27条),避難(法第35条から第35条の3まで),採光・換気(法第28条),用途地域(法第48条)など,第3項に掲げられている規定について既存不適格となっている建築物に関して,以下に該当する場合に限っては,用途変更後も,既存不適格となっている規定を遡及適用させる必要はないが,それ以外の場合については,当該規定を遡及適用させなければならない。
● 類似用途間の用途変更であって,その変更に際して確認申請の対象となるような大規模な工事を行わない場合
● 用途規制の観点から,一定の範囲内の用途変更として取り扱う場合
・
一方,第3項に掲げられていない規定については,法第3条第2項の規定により,用途変更を行う場合であっても,法第3条第3項の規定によって既存不適格の適用が解除されない限り,その効果が継続する。例えば,用途変更に際しては,法第20条について既存不適格である場合,増築,改築又は大規模の修繕・大規模の模様替が行われなければ,同条の遡及適用は受けない。なお,当初の用途に対しての積載荷重が増加する用途の変更が生じる場合には,基準時の規定に適合しなくなるおそれがあることかろ,建築物の構造安全性に支障がないことの確認を行う必要がある。
【解説】
第1項
・
完了検査前に当初の用途を全て変更した場合などは,建築物がある明途に供されていないことから,「用途変更」にはあたらないが,法第6条箒1項の窺定に基づき,適宜,計画変更に伴う確認申請が必要になる(軽微な変更を除く)。
第3項
・
第3項については,第1号から第3号までに掲げる場合を除き,既存不適格である規定であっても,当該規定を遡及的に適用するものと定めているが,これらの各号に掲げる場合が除かれる理由は以下のとおりである。
第1号
増築,改築,大規模の修繕又は模様替を伴う用途変更の場合,法第3条第3項第3号の規定により,既存不適格の適用が解除され,すべての規定について遡及適用が必要となるため。
第2号
令第137条の17に規定する類似の用途相互間の用途変更については,従前の既存不適格の効果を維持しても差し支えないため。
第3号
用途規制上,令第137条の18に規定する範匿内の用途変更については,従前の既存不適格の効果を維持しても差し支えないため。
・
用途変更時における遡及適用の有無の観点からすると,第1号に掲げる場合は,法第3条第3項第3号の効果によって既存不適格の適用が解除されることから,結果的には遡及適用が求められる場合であるため,法制上,確認的に規定されている場合であるといえる。
・
一方,第2号及び第3号に掲げる場合は,類似用途間の変更や一定の範囲内における変更の場合にあっては,遡及適用を求めないでも差し支えないとするものである。
・
従って,前記【内容】においては,遡及適用が不要な場合として,第2号及び第3号についてのみ言及している。
参考).
・用途変更と確認申請(昭和26年1月29日住指第9号)
・用途変更の場合の違反の処分(昭和28年2月7日住指発第14号)
・「用途変更」の解釈について(昭和40年5月29日住指発第77号)
・倉庫を用途変更して共同住宅にした事例について(昭和42年1月7日住指発第2号)
■ 002 用途変更その2 (2006H)
1.確認申請が必要な用途変更(法87条,令137条の17,137条の18)
1).建築行為を伴わなくても,建築物の用途を変更して法6条1項1号の特殊建築物のいずれかとする場合には用途変更の確認申請が必要となる。
法6条1項1号の特殊建築物とは
別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で,その用途に供する部分の床面積の合計が1OOuを超えるもの。
用途変更の例
用途変更の例 |
|||
用途変更 前 | 用途変更 計画 | 用途変更の確認申請手続き | |
100uを超える一般建築物 (例.住宅) |
→ | 特殊建築物 (例.旅館) |
必要 |
一般建築物の部分(>100u) (例.事務所) その他の部分:そのまま |
→ | 特殊建築物 (例.コンビニ) その他の部分:そのまま |
必要 |
10Ouを超える特殊建築物 (例.共同住宅) |
→ | 一般建築物 (例.事務所) |
不要 |
100uを超える特殊建築物 (例.ホテル) |
→ | 特殊建築物 (例.旅館) |
不要 (類似用途相互間のため) |
2).類似用途相互間の場合の緩和
特殊建築物以外の用途(事務所等)に変更する場合や類似の用途相互間におけるものは用途変更の手続は必要ない(下表)。
ただし,この場合でも消防法上の届出が必要となる場合があるので注意を要する。
確認申請不要の類似用途(令137条の17)
確認申請不要の類似用途 |
|
類似用途 | 備考 |
@劇場,映画館,演芸場 | |
A公会堂,集会場 | |
B診療所(患者の収容施設あるもの),児童福社施叢等 | 第一種・第二種低層往居専用地域にあるものは除く |
Cホテル,旅館 | |
D下宿,寄宿舎 | |
E博物館,美術館,図書館 | 第一種・第二種低層住居専用地域にあるものは除く |
F体育館,ボーリング場,スケート場,水泳場,スキー場,ゴルフ練習場,バッティング練習場 | 第一種・第二種中高層住居専用地域又は工業専用地域にあるものは除く |
G百貨店,マーケット,その他の物品販売業を営む店舗 | |
Hキャバレー,カフェー,ナイトクラブ,バー | |
I待合,料理店 | |
J映画スタジオ,テレビスタジオ |
3).留意点
・仮に今回(一期工事)の用途変更の部分が100u以下であれば用途変更の申請は不要だが,次回(二期工事)に用途変更の部分と今回の用途変更の部分との合計が100uを超えた時点で申請が必要となる。
なお,申請が不要でも建築物の所有者等は適法な状態に維持しなければならない。
・工事完了後は工事完了届(完了検査申請書ではない)を建築主事に提出する必要がある(届出のため検査済証は発行されない)。
2.現行法令に適合している建築物における準用規定
(「建築行為」を伴わない用途変更の規制(法87条2項))
法の大部分の規定は,法8条により適切な状態を維持(状態規定の維持)することを要求されているが,以下に掲げる条文規定は「建築行為」のみを禁止するものとなっている。そのため,建築行為を伴わない用途変更には規制ができなくなってしまうこととなり,法87条2項で準用規定を定め規制を図っている。
・用途地域における用途制限
・卸売市場等の特殊建築物の位置の制限
・災害危険区域内の制限
・都市再生特別地区内の用途緩和
・法に基づく条例による規制
3.既存不適格建築物における準用規定
(法87条3項)
1).法の準用範囲(※)
既存不適格建築物で適用除外となっている以下の規定も,用途変更することにより適用される。
・22条指定区域内の木造の特殊建築物の構造制限
・特殊建築物の構造制限
・居室の採光及び換気等
・地階の住宅等の居室
・長屋,共同住宅の各戸の界壁(遮音構造)
・廊下,階段,排煙設備,非常用照明,非常用進入口,敷地内通路
・内装制限
・無窓居室の主要構造部の制限
・用途地域における用途制限
・卸売市場等の特殊建築物の位置の制限
・都市再生特別地区内の用途緩和
・法に基づく条列による規制
※).法28条の2(シックハウス関係)の準用はされていないため,原則,既存遡及の適用はない。
※ご注意).
審査機関・特定行政庁によっては,前述の準用範囲の「…,排煙設備,非常用照明,非常用進入口,敷地内通路」について,法87条3項の「…,第36条中第28条第1項若しくは第35条に関する部分,…」の解釈により準用が適用されないと判断されることがあります。難解な条文の解釈としての相違のようですが,条文そのものの作成趣旨に基づいた判断が望まれるところです。
2).法の適用の緩和
@.類似の用途変更の緩和 1
(「用途地域制限」以外の場合)
下表に掲げる類似用途相互間の用途変更であり,修繕,模様替が大規模でない場合には,引き続き「1.」の準用規定は適用されず既存遡及はない。
法規制の適用のない類似用途(用途規制を除く)(令137条の18第1項)
法規制の適用のない類似用途(用途規制を除く) |
|
@ | 百貨店,マーケット,その地の物品販売業を営む店舗 |
A | キャバレー,カフェー,ナイトクラブ,バー |
B | 待合,料理店 |
C | 映画スタジオ,,テレビスタジオ |
D | 劇場,映画館,演芸場,公会堂,集会場 |
E | 病院,診療所(患者の収容施設あるもの),児童福社施設等 |
F | ホテル,旅館,下宿,共同住宅,寄宿舎 |
G | 博物館,美術館,図書館 |
A.類似の用途変更の緩和 2
(「用途地域制限」の場合)
下表に掲げる類似用途相互間の用途変更で,以下に該当する範囲の場合は用途地域制限はかからない。
イ 用途変更後の不適格部分の床面積の合計は,基準時の1.2倍以内であること
ロ
用途変更後の原動力の出力,機械の台数,容器等の容量は,基準時の1.2倍以内であること
用途地域の制限を受けない類似用途(令137条の18第2項)
用途地域の制限を受けない類似用途 |
|
@ | 法別表第2(に)3号から6号 |
A | 同表(ほ)2号,3号 同表(へ)4号,5号 同表(と)3号(1)から(16) |
B | 同表(ち)2号,3号 同表(り)3号(1)から(20) |
C | 同表(ぬ)1号(1)から(31)まで((1)から(3)まで,(11)及び(12)中「製造」とあるのは「製造,貯蔵又は処理」とする) |
D | 同表(る)5号,6号 同表(を)2号から6号 |
B.用途変更部分のみに準用される規定(同法4項)
既存不適格建築物で適用除外となっている以下の規定については,用途変更部分のみに適用される。
イ
用途変更をする独立部分のみに適用される規定
・廊下,階段,排煙設備,非常用照明,非常用入口,敷地内通路等
ロ
用途変更をする部分のみに適用される規定
・居室の採光及び換気等
・地階の住宅等の居室
・長屋,共同住宅の各戸の界壁(遮音構造)
・内装制限
・無窓居室の主要構造部の制限
参考).「コンバージョン」について
都心部では,再開発等により大型ビルの建設ラッシュが続いている,,それに伴い,中小規模の古いビルなどでは空き室率が上昇している。一方,利便性を求め都心回帰が進む中,より高い収益をするため,既存オフィスビルの往宅への用途転用が盛んである。
ある用途のために建てられた建築物を,時代に見合った用途に改修し,利用価値の高い建物としていく俗に「コンバージョン」といわれているもので,往宅だけではなくホテル,老人ホーム,サテライト大学,コンビニ等への用途転用も多くなっている。