「建築基準法及び関連法解説」
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防火 ・ 準防火構造
「 目 次
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■ 001 防火
・ 準防火構造
防火性能に関する技術的基準(令108条)
準防火性能に関する技術的基準(令109条の6)
参考).防火構造等の注意事項
(1)軒裏を防火構造とする場合の仕様
(2)準防火構造や防火構造などの外壁の上に,表面材として木材を張り付けてよいのか
■ 001 防火
・ 準防火構造 (2006H/2007W)
【防火構造】 (法2条八号,令108条) (2007W)
改定により全面的に性能規定化となりました。
旧法では「鉄網モルタル塗,しっくい塗等の構造で政令で定める防火性能を有するもの」とあり政令で防火性能を定めていました。
今回は「〜防火性能に関して(中略)鉄網モルタル塗,しっくい塗その他の構造で,建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は
建設大臣の認定を受けたもの」と全面的に改正されました。
その防火性能に関する技術的基準を,建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に,加熱開始後30分間次の1及び2に掲げる要件を満たすものであるものとすることとしています。
(第108条関係)
1.耐力壁である外壁は「建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱」によって「構造上支障のある変形,溶融,破壊その他の損傷を生じない」もの(火事で壊れないこと)。(非損傷性)
2.外壁・軒裏は「建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱」によって加熱面以外の屋内面の温度が「可燃物燃焼温度以上に上昇しない」こと(火事で反対側が燃えないこと)。(遮熱性)
以上のような規定から,耐火構造,準耐火構造の耐力壁も防火構造として扱われます。
(2006H)
防火構造や準防火構造(準防火構造という言葉は,法文上,用語の定義づけはされていないが,一般的にこのように呼ばれている。いままでの土塗壁同等構造に相当するもの。)は,主に市街地にある木造建築物等(主要構造部のうち自重または積載荷重(多雪区域は積雪荷重を加える)を支える部分が木材,プラスチックなどの可燃材料で造られた建築物をいう。)で,延焼のおそれのある部分の外壁や軒裏に使用される。
外壁の構造は性能規定化以前と違い,屋外側の仕様に加え屋内側の仕様との組合せが必要となっている。これは性能規定化の中で,防火構造や準防火構造の性能がもっぱら外部からの延焼防止ということに整理されたからである。この延焼防上に必要な性能の1つが遮熱性能であり,屋内側の被覆を必要とする決定打となっているのだ。遮熱性は隣家からの出火の熱で,屋内側にある可燃物が延焼するのを防ぐために規定されたもので,そのために屋内側の被覆が必要となったわけだ。防火性能と準防火性能の内容はともに「非損傷性」「遮熱性」が性能要件とされ,異なっているのはただ延焼防止の時間の差だけである。
以下に防火構造と準防火構造に必要な性能の技術的要件を掲げる。
防火性能に関する技術的基準(令108条)
防火性能に関する技術的基準(令108条) | ||||
構造の種類 | 部分 | 火災の種類 | 時間 | 要件 |
防火構造 | 外壁(耐力壁) | 周囲において発生する通常の火災 | 30分間 | 非損傷性 |
外壁,軒裏 | 周囲において発生する通常の火災 | 30分間 | 遮熱性 |
準防火性能に関する技術的基準(令109条の6) | ||||
構造の種類 | 部分 | 火災の種類 | 時間 | 要件 |
準防火構造 | 外壁(耐力壁) | 周囲において発生する通常の火災 | 20分間 | 非損傷性 |
外壁,軒裏 | 周囲において発生する通常の火災 | 20分間 | 遮熱性 |
参考).防火構造等の注意事項 (2006H)
(1)軒裏を防火構造とする場合の仕様
軒裏を防火構造とする場合,通常,屋内面側は可燃物のない小屋裏や天井裏となり,「遮熱性」の度合は低い。このためH12告示1359号第2第3号(H13告示1684号改正)で屋外側の防火被覆(外壁の屋外仕様のもの)をするだけでよいこととになった。また第2かっこ書きにより,外壁の立ち上がりによって軒裏と屋内側(小屋裏や天井裏)が遮られている場合は,軒裏を防火構造とする必要はない(下図A
)。軒裏を下図@の構造方法とし,ここに軒裏換気口を設ける場合は,当該部分は外壁の開口部には該当しないので,防火設備の措置ではなく軒天換気材としての大臣認定が原則必要となり(準耐火溝造の軒裏についても同様),要注意。
外壁及び軒裏の防火構造
外壁及び軒裏の防火構造 | |
@ 軒裏で遮られている場合 (告示第2第3号) |
A 外壁によって遮られている場合 (告示第2かっこ書き) |
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なお,準耐火構造の告示(H12告示1358号第5第2号ハ)がH16告示789号の改正により,和風木造工法である木造化粧軒裏(木造部材が露出した化粧軒裏)が仕様規定(野地板厚さ30mm以上+外壁等の隙間に厚さ45mm以上の木材面戸板)に追加され,準防火地域等での伝統木造建築物の建造が可能となっている。
(2)準防火構造や防火構造などの外壁の上に,表面材として木材を張り付けてよいのか
(「耐火・準耐火構造」の項も参照)
かねてより法22条屋根不燃化区域内で,土塗壁同等以上の外壁の上に可燃材料である木材の下見材を張り付けてよいのかという議論があり,特定行政庁によって判断が異なっていたが,ようやく法改正で一定の整理がついた。
性能規定化により,各構造(耐火構造,準耐火構造,防火構造,準防火構造)には遮熱性能が求められるようになった。外壁の遮熱性は隣家からの出火により,屋内面が一定温度以上(H12告示1432号:可燃物燃焼温度という。面の平均温度が160℃又はその面の中の最高温度が200℃に達した状態。)となり,その輻射熱で延焼してしまうことを防ぐものである。木材は告示に示された各構造の仕様(個別に大臣認定を受けたものは別問題)の表面に張っても,この温度上昇を助長することにはならないため,下見材として用いることが可能というわけである(下図参照)。しかし,表面に張ることでかえって高熱を発するFRP製の材料等は注意が必要だ。
以下,防火構造等の外壁の表面に木材を張る例
例 1.防火構造の外壁の例(H12告示1359号第1第1号ハ(3))
屋内:石膏ボード(≧9.5mm)
屋外:鉄網モルタル(≧20mm)の上に下見板張り
例 2.準防火構造の外壁の例(H12告示1362号第1第3号)
屋内:石膏ボード(≧9.5mm)
屋外:木毛セメント板(準不燃で表面防水処理したもの)の上に下見板張り
なお,伝統構法である真壁構造(柱やはりが外部に露出する構造)については,防火・準防火構造の構造方法として告示に定められた範囲内(各面の面積の10分の1を超えない場合)で許容できることになっており,従来どおり木材の使用は可能である。
例 .防火構造の外壁(真壁造)で,柱やはりを外部に露出
H12告示1359号第1第1号ハ(3)(改正:H13告示1684号),H12告示1362号第1第3号
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